翌日はいつもより遥かに早起きしてW川に向かった。ヘリポートまで約3時間。1年ぶりなので話す事は山ほどあり、退屈はしないですむが、やはり遠い!!!天気はまずまずでヘリ日和だが、ヘリポートにつくと職員がいい顔をしていない。「昨日山でかなりの雨が降ったようなんだが、情報がないんだ」という。一先ず行ってみて、だめなら引き返そう、と言う事で機上に。川は最上流部は濁っているものの、釣る予定の本流との合流部付近は問題無さそうで、着陸した。
最初の淵を流すが反応無し。一応念のため、ドロッパーも使ったが反応はない。少し上流の淵に入った河野先生の近くに行こうと足首の深さの瀬を渡った。彼の釣りを見ていると、妙に川が濁り始めた。
「ケン、濁って来たんじゃない?」
「ああ、それに水量が急に増したぞ。危険だ、合流部に戻ろう。」
先まで足首だった瀬が、膝まで水が上がっている。流されそうになるほど早い。3人で肩を組んで流されないように徒渉する必要があるほどだった。結局合流部に辿り着いた頃、W川は1メートル以上水位を上げていた。上にも、下にも、本流方面にも移動ができない状況だった。幸いな事に、合流部の河原は幅30メートルほどで高さも5、6メートルはあり、ここに留まっている以上は危険と思えなかった。やむを得ない状況で諦めた我々は、ヘリが迎えに来る5時間後まで、ここで過ごす事にした。
「しょうがないさ、これが“母なる自然”だよ」
とケンは言った。かれはこの mother natureと言う言葉が大好きである。
この前日、上流部に400mmを越す雨が降ったのだと、帰りのヘリの上で聞かされた。この雨がいかに凄かったかは、この後約2週間に渡り水没した町があった事でも分るだろう。ニュージーランド観測史上、最悪の水害となった。多くの牛や羊がその犠牲となった。
我々はと言えば、水害のせいで入渓できる川がほとんどなくなり、釣り人が集中した涌き水の小川、いわゆる spring
creek に行かざるを得なかった。2日目は明らかに先行者がいる状況で、川幅2メートルほどの釣り場である。その中でメスのレインボーを1尾釣った。もう、ほとんど快挙と言っても良い状況であった。3日目は雨量の少なかった地域の川に遠征してみたが、それでも水位は高く、ドライには全く無反応で、ようやく沈ませた小さなフライに、これまた信じられないくらい小さなレインボウが出てくれた。結局2人で3日釣り(初日は10分だけだが)、この2尾だけが全ての獲物だった。  |